
電池はあるのですが止まっています
当店では一応腕時計修理専門ということで、あまり受付はしないのですがたまに持って来られるお客様がいらっしゃいます。今回も海外旅行をした時の想い出のある時計なので何とか直してほしいというご依頼でした。
20年くらい前に購入した時計で、自宅のキッチンに掛けてお使いだったそうです。皿時計は針がむき出しなので機械を止めている穴のところから水分等が入るので機械が錆びているおそれがあります。
機械を見てみるとドイツ製のプラスチックのカバーでした。20年以上ご使用とのことなので、中の部品もいたんでいると考えられたので、機械をセイコーのものに変える必要があると思って、お客様にご説明いたしました。
針は今までのを使えるのか?
機械交換で困るのは、時計の針です。今までと同じ針を使って直してほしいとのお話で、セイコーの機械用の針には同じようなものがありません。その場合にはセイコーの針の取り付け部分(ハカマ)を利用して今までの機械のハカマを針から取り外して付け替える必要があるので、かなり手間がかかります。
結局機械を新品のものに替えて、針は今までのものを使って修理するということで、お預かりいたしました。
お客様が帰られてから、改めてよく時計を見ると、分針がネジでとめられているのに気が付きました。これは針にハカマが付いていないので、セイコーの針を加工するのに難しいものです。そこで何とか機械の分解掃除ができないかと思い、お皿から機械を取り外しました。
分解掃除で直るかもしれない
機械だけにして見直すと裏側のプラスチックのカバーが、ネジ2本で止められていました。今の機械は組み立てロボットで大量生産するので、安価な機械ではネジを使わずにはめ込み式になっていて、分解掃除のときに裏ブタを外すのにもプラスチックが折れないか心配しながら作業しているので、その点に関しては大丈夫そうです。
とにかく初めての機械で修理マニュアルもないので、よく考えながら分解することにしました。まずは回路が故障していないか測定器で調べると1秒ごとに発信がありました。中の歯車が傷んでいなければ直りそうです。電池も単三電池1個です。
2本のネジを外して、裏側のカバーを取りました。電池の漏液もなく回路は正常でした。機械は80%くらい合成樹脂でできています。一つ一つ部品を外しながら点検すると、歯車自体には摩耗もなく部品の交換も必要ないようです。
錆と汚れを取って電池を入れると動きました

長年のキッチンでのご使用で、スチールの棒がところどころ錆びていました。回路に付いている細いコイルを断線させないように注意してすべての部品を外しました。それから歯車を通すスチール棒の錆を取って、歯車はAベンジンで刷毛で洗って自然乾燥させました。
さてこれからは組み立てにはいります。スチールの棒にクロック用の油を注油して、歯車を分解したときと逆の順序で組み立てました。試しに今まで入っていた電池を取り付けると元気にローター(モーターのようなもの)が動き始めました。
さらに組み立てて裏側の蓋を2本のネジで留めて機械の方は出来上がりです。この状態で針を仮付けして24時間試してみました。結果は正常に時を刻んでいました。これで機械部分は終わりました。
元通りの形で修理ができました
次はお皿に機械をネジで取り付けます。最後に針を時針・分針・秒針の順で取り付けて完成です。時刻を合わせて2週間試してみて止まりや遅れが無いことを確認して、これでお客様にお渡しすることができます。
お客様は直った時計を見て喜んでいました。修理代も機械交換よりも数千円安くなり満足していただきました。


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